2015年,WHOは「成人及び子どものための糖類の摂取に関するガイドライン(Guideline on sugars intake for adult and children)」を発表しました.このガイドラインは,肥満やむし歯予防に焦点をあてて非感染性疾患(NCD,すなわち糖尿病,心臓病,脳卒中やがんなどを示す)を減らす目的で,「1日の摂取キロカロリーの10%までを推奨する」としつつも,「5%より低ければ,さらに健康増進効果を得られる」と新指針です.これは調味料やおやつとして食べる量も含め,むし歯も含めた生活習慣病対策から出された量です.
砂糖のとりすぎが,いま多くの生活習慣病へのリスクにつながると規制に乗り出す国が増えています.
砂糖の取りすぎで急速に血糖値が上がり血管への負担が増して動脈硬化をはじめ,循環器の病気へのリスクを高めます.
砂糖を含む糖質は腸で吸収されるときに,ブドウ糖と果糖に分けられて体内に取り込まれますが,この果糖が過剰になると肝臓での中性脂肪が溜まりやすくなり,お酒の飲み過ぎとは関係のない肝炎(非アルコール性肝炎)につながると話題になっています.
現代の高度に加工された食品や,高カロリー,必要な栄養が少ない低栄養食は,異常な食後の血糖値および脂質濃度の急上昇を引き起こすことが多いのです.
この状態はいわゆる食後代謝障害(post-prandial dysmetabolism)と呼ばれているもので,酸化ストレスを起こします.そのストレスは,炎症,内皮機能不全,血液凝固亢進,交感神経活動亢進等のアテローム性動脈硬化症を起こしやすくなり,血圧を上げるホルモン(アンジオテンシノーゲン)が活性化してきます.全身の循環器に障害を与えるのです.これがやがて肥満や糖尿病,動脈硬化症等を引き起こすメタボリックシンドロームへと突き進むのです.
米国心臓学会は,2016年には2~18歳の1日当たりの添加糖摂取量を1日25g未満にすることを勧告,さらに2歳未満の小児に対しては食事への添加糖分を含まないように提言しています.
味の好みが生後早期に始まるため,甘味に偏ると,小児および若年成人における肥満の増加や高血圧といった心疾患リスクが上昇することがその理由です.砂糖に対する考え方はここ10年で大きな転換点を迎えています.砂糖の制限はう蝕(むし歯)予防を乗り越え,多くの生活習慣病のリスク改善に関わることになるのです.
*(注)
砂糖(free sugars,遊離糖類)とは,グルコースやフルクトース等の単糖類,スクロースや砂糖等の二糖類など食品や飲料の加工調理で加えられるもの,ならびにはちみつ,シロップ,果汁,濃縮果汁などに自然に存在する糖類をいいます.
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